B・Bコラム#27 故郷

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さて今日は、ちょっと久々のコラム再掲。

今回は僕の「ライフワーク」となった

あのプロジェクト誕生前夜の

心境を綴ったものになります。

それではどーぞ!

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#27 故郷

 (2006年2月7日)

2月…一般のファンであれ球団関係者であれ、毎年2月1日を迎える時って、なんだか特別な気持ちになりませんか?まだまだ本当の春は遠いけど、選手達はいよいよユニフォームに着替えてキャンプが始まっている。僕はこの北の地でやらなければならないことが沢山あるんで、沖縄のキャンプに顔を出せるまでもうちょっと待たなければならないんだけど、ニュースや新聞でキャンプ情報を見るたびに、何だか置いてけぼりにされたような気分でウズウズしてくるんですよね

札幌でオープン戦が始まるまで、あと1ヶ月弱。そして公式戦の開幕までは1ヶ月半とちょっとです!ただ、開幕が待ち遠しい一方で、この時期になるといつも頭を悩ますのが「今年は何をやろう…?」ということ。毎年同じことばかりやっていても、ネタが尽きるし飽きられる。だけど、「今年もまたコレを楽しみにしてるよ!」というファンの期待にも応えたい。この辺のバランスの取り方が難しいんです。でもね、今年は前からずっと温めていた構想があるんです。前にも「オフの宿題」でちょっと触れたけど、やっと実現出来そうな目途が立ってきたんで、この場を借りて皆さんにお知らせしたいと思います。

 

…と、その前に…

 

以前、このコラムの中で「212の行方」というタイトルで僕の背番号の由来について書いた時、僕が投げかけた問いかけを皆さんは覚えていますか?ファイターズが北海道に移転して来た当時の212市町村は合併によって数がだんだん減り、今年3月末の合併特例法の期限には、その数は最終的に180まで減ることになります。元々僕の背番号は、ファイターズが北海道全体の球団であれ…という願いを込めて付けたもの。じゃあ、今度市町村数が180に落ち着いたら、僕も背番号を180に変更するべきなのか?僕は皆さんがどう思うのか、あの時意見を聞きましたよね?

あの後、僕はこの件に関してファンの皆さんから色々な意見をいただきました。それはファンレターの中であったり、インターネット上であったり、様々な形ではあったけど、大部分の方の意見は一致していたんです。「B・Bにはこのまま212を付け続けてほしい」と…。その理由の中には、「球団が北海道に来た時の背番号だから思い入れがある」「212は見た目的にバランスがいい」などのほか、「私の出身の町が今回の合併で消滅することになって、悲しい思いをしています。だからB・Bにはせめて合併前の212のままでいてほしい」という声もありました。

…そうなんですよね。実を言うと、僕も皆さんに問いかけながら同じ様なことを考えてました。確かに、最初は「212の行方」にも書いた通り、合併で数が減ったらその数に合わせればいいのかな?とも考えてましたけど、ファイターズのマスコットとして北海道のファンと共に2年間を過ごしてきて、やっぱりこの数字には特別な愛着を持つようになってきたんです。だから皆さんに問いかけておきながらも、心のどこかでは「212のままでいてほしい」という声を待っていたのかもしれない。

皆さんの声を聞かせてもらった以上、僕にはしっかりここで答えておく必要があると思う。本当は僕の一存だけで決められることではないけど、僕は球団やファンの皆さんから「背番号を変えた方がいい」と言われるまでは、このまま「212」を背負い続けていこうと思いますきっとそれが、一番多くの人が、そして僕自身も納得する答だと思うので…。

 

なぜここでこの話をしたかと言うと、実は僕が今年始めようと思っているプロジェクトとは、この「212」に大いに関係があることだからなんです。そのプロジェクトとは…題して「212物語」。球団移転当時の212市町村を、僕が全て訪問して回るという企画ですもちろん合併によって名前の消えてしまった町村も、「1ヵ所」として数えます。そして、僕が各地の名所や面白いものを紹介したり、地元の人とふれ合う機会を作ったりして、そのロケの様子を札幌ドームでの公式戦の試合中、今まで「スイングスイング」を流していた枠、8回表終了後のイニング間にビジョンで放映する…といった感じです。

「え?スイングスイング終わっちゃうの?」と思われた方、ちょっと待ってくださいね!確かに「212物語」はスイングスイングの「後番組」という位置付けですけど、結構多くの方がスイングスイングを楽しみにしてくれてたことも知ってるんで、スイングスイングもちゃんと続けるつもりですよ。比率としては、「212物語」では1年に約30市町村を訪問して、大体7年かけて全ての市町村を訪問する。1年間にもっと多くの場所へ行ければ7年もかからずに済むんだけど、1日1ヶ所ロケするとして、月3日×10ヶ月=年間30日間(30市町村)のロケ。僕のスケジュールは今でももうかなり一杯一杯な状態なんで、ロケのスケジュールを押さえるのはこのぐらいが限度なんです。そして1回で紹介しきれない市町村は前編・後編に分けて、年間約45試合ぐらい「212物語」を放送。今年の場合札幌ドームでの試合は57試合だから、残り12試合はスイングスイングをやる…って感じでどうでしょう?(ちなみに東京ドームの試合では、今まで札幌で放送したスイングスイングを見られなかった方達のために、スイングスイング名場面の総集編みたいなものを放送したいと考えています)

「スイングスイングの方が面白かったのに…」と思う方もいるとは思うけど、面白いものはネタが尽きて「最近つまらなくなったよね」と言われる前に、ある程度の見切りを付けることも必要。それに、僕は今どうしてもこの「212物語」を始めたいんです。

 

僕は旅が好きなんで、たまに3日ぐらいまとまった休みが取れると、時々ブラッと道内をあてもなく旅に出かけることがあるんですよね。皆さん知っての通り、北海道は本当に広い。札幌からだと車でも半日近くかかる場所もあるし、離島まで行こうとすると1日がかりになってしまったりする。でも、ファイターズは「北海道」のチーム。どんなに遠く離れたまちでも、僕達の「ホームタウン」なんです。札幌周辺はもちろんのこと、公式戦の行われる旭川・函館・帯広・釧路などでは着実にチームが根付いてきているのは肌で実感しているけど、本当に道内隅から隅まで球団が浸透しているのかと言うと、まだまだだと言わざるを得ません。実際札幌まで行くのに半日もかかるような土地に住んでる方にファイターズの話をしても、まだピンと来ない人も多いかもしれない。でも、逆に言えばそれは「チャンス」でもあるんです。北海道全体の人口は約565万人。これだけの大きな「受け皿」がまだ残されている。今僕達がこの受け皿を地道に「開拓」していけば、きっと将来ファイターズが真の意味で「道民球団」と胸を張って言える日が来るんじゃないのかな、と思うんですよね。正直な話、今はまだ人気選手頼みの部分が多いかもしれない。だけど、本当は超人気選手がいようがいまいが、チームが強かろうが弱かろうが(もちろん強いに越したことはないけど)、いつでも北海道全域から沢山のファンが応援に来て、スタンドを埋め尽くしてくれる…そんな姿が僕達の理想なんです。僕がそのためにどれだけ力になれるか分からないけど、やれるだけのことはやってみようと。それがこの「212物語」なんです。

ただ、正直言って今は不安だらけですね…。果たして上手く行くのだろうか?って。札幌近辺では、幼稚園・保育園訪問やイベントなどでかなりの手応えは掴んでるんだけど、遠く離れた土地の人達が、どれだけB・Bを知ってくれていて、心から「ウチの町に来てほしい」と思ってくれるのか…。それに、各市町村の名所や特産品・イベントなどのいわゆる「売り」には当然季節の限定がある。僕がかなり限られたスケジュールの中で組んだロケの日程に、果たしてそれが上手くハマるのだろうか?各地の名所やふれ合いを球場で放送すると言っても、スイングスイングに取って代われるような楽しい映像に出来るのか?そして、「ファイターズに関心を持ってもらって、球場に応援に来てもらう」という最終的な目標にどれだけつなげられるのか…?

そういった不安を上手く乗り越えるためには、どうしても各市町村の皆さんのまとまった協力が必要なんです!本当は市町村役場などの自治体単位で協力してもらえれば理想なんだけど、市町村役場に限らなくても、例えば地元後援会・商工会議所・教育委員会など、撮影がスムーズに進むよう協力してくれたり、アイデアを提供してくれたりすることが可能な団体だと有難いですね。そして、せっかく出掛けるのであれば、ただ「行って来ました」という自己満足だけで終わらずに、地元の方々と30分でも1時間でも、撮影の合間にふれ合える場を作りたい。そして放映日に合わせて、町の人々が団体で札幌ドームまで見に来てもらう…そんな場所を提供したり、呼びかけをしてくれる方達が、声を掛けてくれるのを心待ちにしています。個人レベルで「B・Bに私のまちに来てほしい」という方もいるかもしれないけど、個人単位でそういった協力体制を作るのは難しいと思うので、もしそういった方がいたら、まずは球団に問合せをしてみてください。詳しくはB・Bニュースや球団インフォメーションなどをチェックしてみてくださいね。

 

成功すれば7年がかりの壮大なプロジェクトになる、この「212物語」。もちろん公式戦、ビジター応援、幼稚園・保育園訪問、イベント出演など今やっている仕事もそのままのペースでこなしながらになるんで一層忙しくなりそうだけど、これからどれだけ沢山の場所でどれだけ沢山の人々と出会えるのか、ロケ自体を楽しみながらやっていきたいと思います。どんなに離れていようが、どんなに交通の便が悪かろうが、そこが道内である限り僕は出掛けるつもりですよ。僕達にとっては、北海道の全てが「故郷」なんですから。

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そう、ここで語ってるのは、

僕がこの後10年間かけて

道内全市町村を巡った「212物語」の構想で、

実際このコラムをアップして約2週間後

僕は第1話の紋別市に

「旅立つ」ことになりました。

 

僕は一度始めたことを

中途半端に投げ出すのはイヤなので、

このプロジェクトもスタートしたからには

絶対最後までやり遂げる!

って気持ちは当初から強く持ってましたが、

10年かかって実際に完遂した時は

これまでのマスコット人生の中で

一番感動したかもしれません

当時はスイングスイングの「後番組」

って発想から始まった212物語だけど、

僕がこのプロジェクトの中で得たものは

物凄く大きくて、

ホントやって良かったな、

ってつくづく感じてます。

なにせ、北海道全てのまちに

僕が行った「足跡」が残ってる訳だから、

どこに行っても「何年前にココに来たよね」

って話がまちの人と出来るし、

僕もまちの名前を聞いただけで

それが北海道のどの辺にあって、

どんな見どころや特産品があるのか

パッと思い浮かべることが出来る。

まさに、今の活動に大いに役立ってます

でも、当時はある意味良い時代でしたね。

僕が企画書を作って提案した時、

当時の球団社長の「やったらええやん?」

の一言でゴーサインが出ましたから

そもそも費用対効果だのKPIだのと

細かくチェックされる今の時代だったら、

おそらくOK出てなかったんじゃないかと💦

 

このコラムを書いた当時の構想は、

年間30ヵ所回って7年間でゴール、

映像はイニング間に放映する、

といったイメージだったけど、

その後色々試行錯誤の結果

プロジェクト期間は10年に延びて

試合開始前の時間帯にビジョンで放映、

と言う形に最終的に落ち着きました。

その試行錯誤の様子は、後のコラム

#30で語られることになります。

そんな感じで若干修正は加わったけど、

僕がこの時語ってた不安要素、

例えば訪問先のまちで交流会をしたいけど

どれだけの人が集まってくれるのか?とか、

全市町村の日程が上手くハマるんだろうかとか…

そういったモノは

終わってみれば大体が上手く行って、

当初抱いていたイメージ通り

最後までやり切れたんじゃないかな、

っていう自負はあります。

まさかそれが、メインを卒業した後の

僕の活動の場に繋がってくとは

当時は思いもしてなかったですが(笑)。

 

あとはこのコラムで語ってた

「将来、真の道民球団になりたい」

という願いが実現したかどうかですね。

それは人によって感じ方が違うと思うし、

たとえ今実現出来ていたとしても

これから先ずっとそうであり続けるためには

道内すべての地域に暮らしてる人達に

寄り添う姿勢を失ってはいけない。

今の僕の存在意義は、

そういうところにあると思っています。